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就職活動で最も重要なのは「自己分析」
就職活動において避けては通れないものが「自己分析」です。業界や企業選びはもちろん、エントリーシートや面接の準備でも重要になるため、この自己分析は必ず行うことになると思います。自己分析の前段階としてやっておくと良いのが「自分史の作成」です。自分史を作成することで、自己分析をより深く行うことが可能になります。
今回は、この自分史の書き方について、具体的な例も交えながらご紹介したいと思います。
自己分析に役立つ「自分史」とは?
自分史とは、読んで字のごとく「自分の歴史」です。
「日本史」では日本の歴史が様々な観点から時系列で語られ、また、「世界史」では世界各国の動静が時系列で書き連ねられます。「自分史」は、これらと同様に自分の過去の出来事を時系列で整理し、まとめたものとなります。
「自分史」と呼ぶと壮大な物語で偉人伝のような内容をイメージしてしまうかもしれませんが、『過去にあったことを思い出して、書き出していく作業』と考えると気楽に取り組めるのではないでしょうか?
自分史は書物にする訳ではないので、最初は箇条書きをベースにするもので十分です。以下にあるような手順で、コンパクトにわかりやすくまとめていきましょう。
そもそも、自分史を作成する目的は?
自分史を作成する目的は、自分の価値観を明確にすることにあります。
自分は何が好きで何が得意なのか、何が嫌いで何が苦手なのかなどを知っていれば、企業が発信しているメッセージと自分の価値観を比べることで自分とその企業の相性などを想像できるようになっていきます。
さらには、何かしらの選択を迫られた時に、日頃から自分が何に重きを置いて、物事の判断をどのように行っているのか、自分自身を理解することができていれば、その時自分がどのような判断をすべきかを明確に捉えられるようになります。
例えば、あなたが、給与は高いが残業も多いA社と、給与は並だが残業があまりないB社を比較していた時、ただ考えるだけであれば悩むケースがでてきます。ですが、自分史を作成し「過去の自分が、似たような状況の時にどのような判断をしてきていて、その結果となる今をどのように捉えているのか?」などをコツコツ書き出して、明確に整理しておくことで「今までの自分の経験を基にすると、B社を選択した方が後悔することが少なさそうだ!」といった判断をすることができるようになるのです。
エントリーシート(ES)の作成に役立つ
自分史を作成すると、企業選定のみならず、その後の選考においても活用することができるようになります。例えば、学生時代に経験したエピソードなども交えながら書き上げることになるエントリーシート(ES)の作成です。自分史を作成することは過去の様々なエピソードを書き出すことになるので、エントリーする企業が決まったらそこの企業理念を読み込み、その企業理念や志望内容に関連したエピソードを自分史の中から選び、書くことができるようになっていきます。
社会人として求められるのは過程よりも結果。思考だけでなく最終的な行動をということがしばしばあります。自分史=実際に自分が行った内容と結果なので、そこが企業理念などと一致していると「あなたはなぜ弊社を志望したのか?」といった質問にも、説得力をもって答えられるようになるのです。
「面接対策」にも自分史は有効
また、自分史を作成しておくことで面接にも役立ちます。面接ではあなた自身のスキルもですが、同時に価値観も面接官によって見定められています。「この人はうちの会社の文化に合うだろうか?」「この人は任された仕事に対して最後まで責任感を持って取り組んでくれるだろうか?」といった考えを頭に入れたうえで、あなた個人の価値観を引き出せるような質問をしているのです。
そうした中で、先ほどのとおり「行動(結果)」と言う形で面接官の回答に答えることができれば、「この人は実際にこのような行動をしてきているのでうちの会社に合うだろう」「この人はきちんとこのような結果を残してくれているのでうちの会社でもしっかりとやり切ってくれるだろう」という印象を与えることができます。
他にも、自分史の作成を通じて複数のエピソードが整理されていることによって、雑談に対しても対応がしやすくなっていきます。掘り下げて尋ねられるような質問を受けた場合、「エントリーシートに書いている内容以外にも、大学時代に似たような●●を経験しており、同様に××と言った結果を残しております」といった回答ができれば、より説得力を高めつつアピールすることができ、発言の信用度を上げることができます。
自分史の書き出し方とフォーマット
自分史の書き出し方について説明します。
手順は以下の通りです。
- エピソードを時系列で、思い出せるだけ書き出す
- エピソードごとに項目を埋める
- 価値観でグルーピングし「一言」でまとめてみる
1. エピソードを時系列で、思い出せるだけ書き出す
まずは基になるエピソードの書き出しです。ポイントは、小学校、中学校、高校、大学等の期間ごとや春夏秋冬などの季節、卒業式や入試、体育祭や文化祭などのイベントなど、区切りとなるフェーズごとに思い出してみることです。また、自分だけでは思いつかない時は周りの家族や友人などに聞いてみるのも方法のひとつです。
2. エピソードごとに項目を埋める
1つ目の作業で書き出したそれぞれのエピソードに対して、以下の観点を書き出してみてください。
背景(その時の状況)
前提条件となる情報や、エピソード当時の状況など、「なぜそのエピソードは起こったのか」がわかる内容を書いてください
行動(行った内容)
実際にそのエピソード内であなたが行った内容を、なるべく詳細に書いてみてください
思考(どう考えて行動を選択したのか)
「背景」で書いた状況を基に、「行動」で書いた内容を実行に移した思考の過程を書いてみてください
結果(最終的にどうなったか)
行動の結果、「外部に対して」起こった内容や変化について、書いてみてください
変化(その後どう自身が変わったのか)
上記全てが終わった後、「あなた自身に対して」起こった変化(考え方や行動など)を書いてみてください。
自分に影響を与えた行動には必ずこれらの要素が含まれます。
この内容をしっかりと書き出すことによって自分史の完成度が向上し、自分自身の価値観がクリアになっていくのです。
【例】小学校時代のカブトムシ採りについて
・エピソード
小学3~4年の頃、近所の山でカブトムシを取るために工夫を凝らし、友達よりも早く捕まえることができた
・背景
TVでカブトムシ売買についての特集を見て友達の間でカブトムシが流行り、誰が一番最初にカブトムシを取れるか競争になった
・行動
その時の知識からカブトムシが良くとれる木の当たりはついていたので、親に以下のようなことを聞き、毎朝の日課として該当の木を欠かさず確認しに行った。
- カブトムシが好きそうな餌
- カブトムシが取りやすい時間帯
- カブトムシを逃がさないコツ
・思考
場所はわかっていたので、あとはカブトムシを捕まえられる確率をどれだけ上げられるかと、根気強さの勝負と考えていた。根気強さには自信があったので、あとは確率を上げるために物事をよく知っている両親に聞けば確率は上げられると考え、質問しようと考えた。
・結果
友達の誰よりも早くカブトムシを捕まえることができた。さらにはその後1週間で4匹を捕まえ、友達に自慢することができた。
・変化
いつ起こるかわからないことについては、確率を上げるためにできることを実行すること、そして根気強さの両方が必要と学び、その後の生活や部活動の中でも「粘り強く考えやりきる」意識が高まった。
逆にどうしてもこれらの内容がどうしても書けない内容については、エントリーシートや面接などでも「自分の言葉で」語ることができないため、いったんよけておいても良いかもしれません。
3. 価値観でグルーピングし「一言」でまとめてみる
全てのエピソードに対して項目を埋めることができたら、最後にグルーピングを行いましょう。自分自身の中で考え方が似ているエピソードをまとめ、ラベルとして、一言のキーワードで言い表してみてください。
エピソードの数にもよりますが、大体2~3個あるとちょうど良い感じです。
ここで出てきたキーワードは、そのまま、あなた自身の価値観を表すキーワードとなるはずです。これらのキーワードを軸に、企業を選んだりエントリーシートを書いてみたりすると良いかもしれません。
自分史を書いたら誰かに見てもらおう
自分史を書いてみたら、できれば他の人に実際に見てみてもらいましょう。読んで「確かにそうだね」と言ってもらえるのであれば自己分析として適切な内容になっているはずです。
逆に「ちょっと印象と違う」と言われるのであれば、実際にどこが印象と違うのかを確認してみましょう。書き方の問題で伝わっていない場合、自分の認識と他人の認識が異なっている場合などあるので、内容に応じて表現を変えたりするなど、落としどころを探ってみてください。
また、そのうえで、気になったところについては質問もしてもらいましょう。カジュアルな模擬面接として、質疑応答の訓練にもなります。
まずは身近な友人や家族に見てもらい、できれば大学の就職課(キャリアセンター)の人などにも見てもらって質問を投げかけてもらうと、口頭での説明の練習にもなるので本番の面接に役立ちます。質疑応答で詰まったところはしっかりと回答できるようにし、ブラッシュアップしていくことで「伝わりやすいエピソード」が出来上がるでしょう。
まとめ
自分史は、自己分析のために必須と言っても良い作業です。エピソードとその背景をしっかりと自分なりに深堀りし、まとめていくことで自分自身の価値観がクリアになり、企業選定がしやすくなります。
また、エントリーシートや面接においても、自分自身と応募先企業の相性を説明できるようになり、志望動機に説得力を増すことができるようになります。
ただし、そのためには、出来あがった自分史を他の人にも見てもらってブラッシュアップしていくことが重要です。これらの工程を経ることで、自分自身の考えをしっかりと伝えることができるようになるのです。
うまくいかない人は、東京しごとセンターのような就業支援施設(ジョブカフェ)などで、サポートを受けることも可能です。
価値観の合う企業に対して、しっかりと自分の考えを伝えられるように、お手伝いをいたします。