就活をしていてある意味最初のハードルとなるのが、「メール」ではないでしょうか?企業の担当者などのビジネスパーソンと直接のやり取りをする機会は、学生時代になかなかなく、なおかつそれが自分の今後の人生に直結するともなると、緊張してしまうのは当然です。ですが、完璧なものを目指すのは非常に難しいうえに、企業によって文化が異なるため、そもそもどこに出しても完璧であるというメール文は存在しません。
今回は、就職活動を頑張っている皆さんに向けて、採用や人事の担当者など社会人にメールを送るにあたってのマナーや、気をつけておきたいポイントなどを、例文付きでご紹介いたします。
まずは「外さない」メールの書き方を覚える
社会人同士のやり取りは、ある程度のフォーマットが決まっています。いわゆる「お世話になっております。」から始まる定型文などがこれにあたり、こうしたポイントをいくつか抑えておくだけで、読んでいて不快にならない「外さない」やり取りができるようになるのです。
前述のとおり企業によって文化は異なりますが、それら文化が異なる企業同士が、毎日のようにやり取りをしながら問題なく仕事が回っているのですから、企業側でも「問題ない」と感じる範囲は意外と広いのです。だからこそ、狙うべきは「外さない」メールの書き方です。まずはこの書き方を覚え、減点のないやり取りができるようにしましょう。
企業側から連絡が来る状況とは?
人事の担当者から連絡が来るタイミングは、大きく「内定前」「内定後」のふたつに分けることができます。
内定前に来るメール
大きくわけると次のようなものがあります。
- 選考のご案内
- 面接通過の連絡と次回面接の案内
- 書類等の不備や疑問点についての質問
内定後に来るメール
内定後に来るメールはと言うと、次のようなものが挙げられます。
- 内定のご連絡 ※電話で来る場合もあり
- 手続き関連の連絡
- 内定式や入社式の連絡
こうした人事担当者から来るメールで気にするべきなのは次の2つです。
- 一斉メールなのか?それとも個別メールなのか?
- どんなアクション(返信)をいつまでに求められているか
一斉メールなのか?それとも個別メールなのか?
一斉メールで送られているものであれば定型作業の中で行っているものであり、通常業務の範疇であると考えられます。ですが、個別メールで送られている場合、何らかのイレギュラーにより担当者の人はあなたのために時間を割いて対応している形となります。ポジティブな内容であれ、ネガティブな内容であれ、担当者の人が個人を認識したうえで送っているメールに対しては、対応についてより一層気にしないといけないのは何となくわかるのではないでしょうか。
返信期限 (いつまでに返事をすればいい!?)
2点目のアクションと期限については、ある意味社会人としての基礎力の部分です。社会人になると、当然最初は上長の指示に従い作業することになります。この時、「指示」した内容をきちんと理解して対応してくれないと、社会人としての評価は低くなってしまいます。そうなると、会社としては仕事がうまく回らなくなってしまうので、きちんと理解したうえで期限までに対応してくれるような人を採用したいと考えるわけです。だからこそ、メールをきちんと読み、やるべきことをやるのが重要になります。意外と適当に対応する人、いたりするんです・・・。ここでも大切なのは「外さない」ということです。
「就活メール」で気を付けるべき9つのポイント
ここからは、メールによる実際のやり取りの中で気を付けるべきポイントをお伝えしていきたいと思います。まずはメールの内容からです。メールの内容は、以下の9つのポイントを確認しましょう。
- 返信先
- メールアドレスとアドレス帳などの登録名
- 件名
- 宛名
- 書き出し
- 本文
- 締めの言葉
- 署名
- 添付ファイル
1.返信先
メールの宛名や差出人には次の4つの項目がありますが、返信は必ず「送ってきた相手全て」に送りましょう。
- FROM(送り主)
- TO(送り先)
- CC(カーボンコピー)
- BCC(ブラインドカーボンコピー:TOの人とCCの人にはBCCの人が見えない)
図表:メーラーの返信ボタンの見本
通常の「返信」ではFROMの人宛だけに送られることになりますが、せっかくCCに入れていたのに、全員返信をしてくれないと情報が共有されず、お相手に余計な手間や不快な気持ちを与えてしまうことがあります。CCに入っている=この人にも把握しておいてほしいということになるので、原則として「全員へ返信」を選択しましょう。
2.メールアドレスとアドレス帳などの登録名
メールアドレスについては、あまり意識する機会が少ないかもしれません。ですが、企業によっては「表示名」を意識したほうが良いケースがあります。例えば、相手が役職者であったりする場合、「メールの表示名」の部分を「●●様」や「●●取締役」等に書き換えることにより、より丁寧な印象を与えることができます。ベンチャー企業やIT系の場合はそこまで気にするケースは少ないようですが、「外さない」をテーマに減点のないやり取りを心がけてください。
3.件名
相手から届いたメールの場合、原則としてメールの件名は変更しないで返信しましょう。
もちろん相手から、件名に関する指示があった場合や、まったく違う用件のメールを送る時には変えた方が良いのですが、安易に別の件名に変えてしまうと、メーラーによってはそれまでのやり取りの履歴を容易にさかのぼれる「スレッド表示」がされなくなってしまうなど、相手とその状況によってはストレスを感じさせてしまう恐れがあります。わざわざ件名を変えなくても、返信ボタンを押せば、返信であることを意味する「Re:」という文字列を件名に自動付与して送ってくれたりするので、相手から来たメールの場合は件名を変えずに返信していただいても問題ありません。
ちなみに自分の方から最初にメールを送る場合は、例えば「【●●大学:佐藤】●●についてのご連絡」と言ったように、自分が誰なのか、要件が何なのかが、一目でわかるように記載するなどの配慮を心がけましょう。
4.宛名
メールの最初には、必ず「誰宛のメールなのか」を記載する必要があります。LINEやSMS(携帯のショートメッセージ)ではほぼ書くことはありませんが、メールの場合は「作法」や「マナー」や「お約束」として、ちゃんと記載して送るべき重要な要素となっています。
原則としての書き方ですが、次のようになります。
- 企業名
- 部門名
- 名前+肩書(or様)
例としては、次のような宛名の書き方です。
【良い例】
株式会社ABC商事
総務人事部 田中課長お世話になっております。
●●大学の佐藤です。
たまに「田中課長様」や「田中課長殿」といった書き方をする人がいますが、役職名=敬称でもあるので、様や殿と言った敬称をさらに重ねる必要はありません。主任、課長、部長、取締役といった肩書がない場合、どうしても分からない場合は、「●●様」として様をつけましょう。その際、宛先に複数の名前を書きたい場合は、役職や肩書がより上の人から順に名前を書きます。
【良い例】
株式会社ABC商事
総務人事部 田中課長
総務部 高橋様はじめまして。
●●大学の佐藤と申します。
はじめてメールを送る時には「部署名」までしっかり書いた方が相手にしっかりとした印象を与えますが、ある程度のやり取りをした失礼のないところからは、部署名は省略した方がスマートかも知れません。
【良い例】
株式会社ABC商事
田中課長 高橋様いつも大変お世話になっております。
●●大学の佐藤です。
最初からCCに入っていた知らない人については、わざわざメール本文中の宛名のところで名前を出す必要はありません。
しかし、例えば、役職者も交えた「面接」を受けた後などに、事務的な書類を担当者宛に送るような場合には、役職者の方もCCに入っているのであれば、メールの冒頭でその方のお名前を出し、印象を良くするなどの工夫も行ってみましょう。
【良い例】
株式会社ABC商事 高橋様
CC:田中課長大変お世話になっております。
●●大学の佐藤です。本日は面接ありがとうございました。
お約束の書類をお送りさせていただきますので
ご査収のほど宜しくお願い致します。
5.書き出し
書き出しは、まずは定型文として次のように覚えておけば良いでしょう。
【良い例】
大変お世話になっております。
●●大学の●●です。
この形式を基本形として、初めてのやり取りの相手の場合には
【良い例】
初めまして。
●●大学の●●と申します。
と書いたり、
やり取りがしばらく空いた場合は
【良い例】
ご無沙汰しております。
●●大学の●●です。
といったように使い分けると、相手を不快にせずやり取りを行うことができます。
6.本文
本文の書き方は、以下の4つを意識しましょう。
- 謝意から始める
- 結論から端的に書く
- 改行は大体30文字前後を目安に行う
- 堅苦しくなりすぎる必要はないが丁寧に書く
謝意から始める
「ご連絡ありがとうございます。」や「お忙しい中ご返信をいただき、誠にありがとうございます。」など、謝意を表す文言を入れましょう。定型文ではありますが、わざわざ時間を取ってメールを書いてくれている相手に対して、謝意をひとこと入れるだけで、受け取った人は柔らかい印象を持つものです。何度も短期間に同じ内容、担当者とのやり取りが繰り返されている場合は途中から抜いてしまってもかまいません。
結論から端的に書く
これは社会人としても重要なことですが、メールに限らず原則は結論から記載するべきです。相手は時間がない中で必要な情報を理解する必要があるわけですから、最初に結論が書いてあった方が助かるのです。(忙しい人は1日に何百通というメールを受信し、それぞれに対応するので、結論を先に書くことは本当に重要です。)
記載例としては
【良い例】
お送り頂いた候補日を確認いたしました。
次回面接の日程については【●月×日の11:00~】でお願いいたします。
と言ったように、
- 送られてきた内容をきちんと確認及び理解したこと
- そのうえで結論としてどうする(したい)のか
ということを明確に書きましょう。
これが例えば、次のような書き方の場合、冗長な文章となってしまいパッと頭に入りにくくなってしまいます。
【悪い例】
メールを頂いたのち、自身の今後の予定を確認いたしました。
来週以降の予定の中で頂いた候補日の中ですと
授業などがないので、面接にご対応できそうな日程としては
現在のところ●月×日の11:00となっておりますが
よろしかったでしょうか?
背景や経緯などを記載しなければならない場合も、まずは結論を記載したうえでそのあとに「上記に至った背景としては~」といった前置きをしたうえで詳細を述べましょう。
改行は大体30文字前後を目安に行う
これは相手の環境に合わせてあげることが目的となります。PCで使われるメーラー(outlookやthunderbirdなど)は、大体の場合デフォルトで32文字程度で自動改行されてしまうことが多くなっています。そうなると、単語の切れ方などが不自然になってしまい読みにくく感じてしまうことが多いため、その前に適度な文字数で改行を入れてあげるのが親切になります。昨今はスマートフォンなどでもメールを受信することが当たり前になってきていますが、PC上での見やすさを優先しておけば間違いがありません。
堅苦しくなりすぎる必要はないが丁寧に書く
たまに「ありがとうございます」を「有難う御座います」と書いたりする人がいます。なるべく粗相のないように丁寧に書きたいのかもしれませんが、堅苦しく感じてしまう人の方が多いようです。漢字が多くなりすぎると固い印象になってしまうので、普段使っている以上に無理に漢字にする必要はありません。内容がきちんと丁寧に書かれていれさえすれば、必要以上に難しい文章にしなくても大丈夫です。
7.締めの言葉
これも大体の場合は定型文でかまわない部分です。
形式は、次のようになります。
- 自分のやること
- 相手への依頼内容
- 「以上、よろしくお願いいたします。」
自分のやること、相手への依頼内容は、メールの内容によってあったりなかったりします。
例:自分のやることがあった場合
【良い例】
ご指示いただきました面接日程については、
●日までにご返信いたします。以上、よろしくお願いいたします。
例:相手への依頼内容があった場合
【良い例】
添付にてお送りいたします書類について、
ご査収いただけますと幸いです。以上、よろしくお願いいたします。
8.署名
シンプルなもので構わないので、できるだけ署名を付けるようにしましょう。
テンプレートとしては、以下のようなシンプルなものでもかまいません。
【良い例】
●●大学▲▲学部3年
佐藤 一郎mobile:080-0000-0000
mail :test@test.test
住所情報を記載したほうが良いと書いているサイトもありますが、昨今の個人情報保護の動きを考えると、なくても問題ないと思います。併せて「自分のメールアドレスの表示名」も要チェックです。できるだけ自分の名前をフルネームで入れてください。受け取った相手が、あなたが誰なのかを判別するために役立ちます。細かい部分ですが意識するとなお良いポイントになります。
【良い例】
From: 佐藤 一郎 <test@test.test>
9.添付ファイル
書類を送付する際に添付ファイルを送ることがあります。この時気を付けるポイントは3つです。
- ファイルの種類
- ファイルサイズ
- ファイルの説明の記載
ファイルの種類は、特に指定されていない場合は原則としてMicrosoftのofficeで使えるファイルか、pdf、もしくはメモ帳などのテキストファイルにしましょう。
その際ファイルサイズはできれば合計1~2MBくらいに収められると良いです。たまに気づかず数十MBのサイズを送る人がいますが、相手方のメール受信に時間がかかるほか、そもそもメールサーバに拒否され届かない可能性もあります。
また、ファイルを添付した際は、添付したことと、その内容(ファイル名とその中身の概要)をメールの本文中に記載しておくとより親切です。意識してみてください。
人事担当者とのメールの返信タイミング
担当者の方からメールが来たら、できれば当日中に返信できることがベスト、24時間以内が最低限、それ以上返せない場合は一報入れるというのが原則です。期日がまだ先だから…と、ギリギリに連絡してくる人と、確認次第すぐに折り返してくれる人のどちらが安心できるかを考えたら当然後者になりますね。担当者の人からしてみても、送った内容に対し当日中にレスポンスがあると何となく「やる気」を感じるものです。
ですが、返信する側が常に返信できる環境にいるとは限りません。その場合、送られてから24時間以内にきちんとした返信ができそうであればそのタイミングで返信をし、もしそれ以上遅れそうであれば携帯からでも次のような内容を送っておきましょう。
【良い例】
ご連絡ありがとうございます。
私事で大変恐縮ではございますが、現在●●で●●におり
すぐに対応させていただくことが難しい状況におります。つきましては、ご指示いただいた「●●」の件につきましては、
確認のうえ【●月●日】までには必ずご返信させていただきます。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんが
何卒宜しくお願い致します。
メールの返信はなるだけPCで
メールの返信は、なるべくPCで行いましょう。
その理由は、「相手も使っているデバイスだから」です。
スマートフォンでもメールを書くことはできますが、前述のように改行の位置やメールの差出人情報など細かい部分で確認がしづらかったりします。また、コピー&ペーストなどをした際に、知らないうちに書式情報が引き継がれてしまうこともありますので必ず注意をしてください。(スマートフォンの場合はより気づきにくいです)
だからこそ、できるだけ相手と同じ環境でメールを作成し、文章としての読みやすさや見た目の成形など問題ないかどうかをきちんとチェックしたうえで送れるようにしましょう。
しかし、外出先などどうしてもPCでの対応ができない場合は仕方がありませんし、変な表示とならないように十分に注意する他、「外出先でPCでの確認ができないためスマホから失礼いたします」など一言断りを入れてから本文を記載してもかまいません。
まとめ
- メールに完璧な正解はなし!100点を狙わずまずは「外さない」書き方を覚えましょう
- 誰から誰宛で送っているメールなのか、求められているアクションと期日は何なのかを確認しましょう
- 社会人共通の「お約束」、定型文を覚えて考える時間を時短しましょう
- 本題は結論から!相手が求めている内容に対して端的に答えましょう
- メールの返信はできればPCから。相手の環境に合わせることで見え方のチェックもできます
- 返信が遅くなりそうなときはスマホからであっても一言断りを入れましょう
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みなさんと人事の方のやり取りがスムーズにいくことをお祈りしています。