退職理由を偽るケース

面接の際に、以前勤めていた会社について「退職理由」を聞かれることがあります。

退職にはいろいろな理由があり、応答する際にはとても気を遣うと思います。
面接の解説書のようなものには、「面接時に前社の悪口を言ってはいけない」等と書いてあることも多く、どのように応答したらよいのか迷ってしまうのではないでしょうか。

特に、パワハラなどで辞めざるを得なかった場合には、その質問に対する応答はなお一層気を遣い、場合によっては、退職理由を偽る方もいらっしゃると聞きます。

実際にあった事例

実際に、これまでのご相談で次のようなケースがありました。
(※内容は一部変えております)

社長を含め数名の中小企業でCADの設計業務を担当することになった。入社日から毎日、特別な理由もなく、朝の30~40分間、全社員の前で社長に怒鳴られる。入社した頃は、なぜ怒られるのか理解しようと努めたが、次第に聞くことも止め、ひたすら耐えることに専念した。

1年半過ぎたころからもう耐える事が出来ず退社した。転職活動を開始したが、面接で退職理由について聞かれると、本に書いてあった「前社の悪口を言ってはいけない」ということを思い出し、取り繕うとすると話しにつじつまが合わなくなり、面接が通過しなかった。

一方で、退職理由を正直に話そうとすると、涙が止まらなくなる。
だから、やはり面接の際は、正直に言えずに取り繕って話す。
その後も、面接を通過することは出来なかった。

事実であっても、話しづらい!?

初めて相談に来られた時、ご本人に元気なご様子はなく、半ば放心状態で「面接が通過しないので、なんとかしたい」というご相談をいただきました。

お話を伺っているなかで、ご本人が説明する退職理由について、今一つ納得がいきませんでした。「本音で語ってください」とお伝えしたところ、パワハラの問題を抱えていたことを、涙を流しながら語ってくれました。「辛かったでしょう。理由もわからず怒鳴られて、悔しい思いをされたでしょうね。」とお伝えしました。

「面接で、本当のことを話しませんか?」と提案をしましたが、ご本人は「とても言えません。言えないので、どのように応答したらよいのか一緒に考えてください。」というご返答でした。

ご本人の強い希望もあり、その後の面接にも「退職理由」を明かさない方針で臨みますが、やはりその後も面接を通過することはありませんでした。ご本人としても、本当のことを語っていないので、面接が通らない現実に対して腑に落ちないものを感じておられました。そこで「面接で本当のことを話してみませんか?」ともう一度問うと、今度は了解されました。

事実と感情を分けることが大事

面接で本当の退職理由を話す上で、まずはパワハラの状況を、「事実」と、その時の「感情(気持ち)」とに分けることが大事であるとお伝えしました。それらを整理すると次のようになります。

事実

1年半の間、毎日朝30~40分間、理由もなく一方的に怒鳴られる。
周囲の人の援助は無い。

感情(気持ち)

怒鳴られる理由が分からない。
自分の何がわるいのだろうか?自分に何か悪いところがあるから、きっと怒られるのだ。
退職したいけど仕事が見つかるかわからないからこのままいようと思う。
だけど、悔しいし、悲しいし、情けない。どうしたらいいのだろう?

 

そして、整理を行った「事実」の部分を、退職理由として淡々と述べる練習を一緒に行ないました。

事実を述べることは悪口ではない

感情や気持ちについては主観の問題となる可能性もあるので「悪口」と受け取られるかもしれません。しかし「事実」を述べることは、会社の悪口になるのでしょうか?私は、そのように思いません。

退職理由についてしっかりと伝えるための練習をご本人と一緒に何度も行い、ご本人も面接の場で自信を持って話せるようになった頃、見事正社員で就職することができました。ご本人も、希望する会社に正社員として就職することができたことはもちろん、本当の事を話すことができて満足されていました。

気軽に相談してください

いかがでしたでしょうか?
転職をする時の「退職理由」について、前社でネガティブなことがあって退職をする場合には、事実と感情を分けることが重要かもしれません。また、その上で事実についてしっかりと話すことができるようになることも重要です。

実際の退職理由については人それぞれで様々なケースがあり、私たち東京しごとセンターのアドバイザーは、ご来所いただく求職者一人ひとりに「カウンセリング」を行いながら、就職や転職の課題を乗り越えていくための支援を行っております。面接対策や応募書類の添削なども行っていますので、どうぞお気軽に相談をしに来てくださいね。

編集部のコメント

今回のコラムでは、転職をする時の「退職理由」について、何をどの程度話しても良いのか、東京しごとセンターのアドバイザーに解説してもらいました。

転職理由は人それぞれですが、事実と感情を分けて話すというのはとても参考になるお話でしたね。東京しごとセンターでは、アドバイザーによる個別カウンセリング、面接対策の他、自己分析など、手厚いサービスを無料でご提供しております。宜しければ是非活用してくださいね。