自己分析に役立つフレームワークはいろいろありますが、その中でも価値観や強みを可視化できるツールとして便利なのが「モチベーショングラフ」です。作成の仕方や、活用方法を紹介します。
モチベーショングラフとは?
モチベーショングラフとは、幼少期から現在までを振り返りながらモチベーションの変化をグラフで表現する自己分析方法の1つです。様々な出来事を通じて自分自身の感情を深掘りし、モチベーションの起伏をグラフとして可視化できるため、自分の価値観や性格などをあらためて見つめ直すことができます。

過去の出来事を単に羅列するだけではなく、心の動きに注目しながらグラフを作成するため、「どういうことにモチベーションが高まるのか」や、逆に「どういう場面だと力が発揮しにくいか」といった自分自身の特性や強み・弱みの分析もしやすくなります。
自分自身のこれまでを振り返りながら過去の経験を整理できるため、就活時はもちろん、キャリアデザインで悩んだり、新しいことを始めたいと思った時にも活用できる「自己分析のためのフレームワーク」なのです。
モチベーショングラフを作成するメリットとは?
モチベーショングラフを作成する意義や、得られるメリットはいろいろとあります。
●自分自身の「モチベーションの源泉」を知ることができる
モチベーショングラフを作成することで、「自分はどういうときにモチベーションが上がる(下がる)のか」を把握することができます。つまり、自分自身のモチベーションの源泉が何なのかを知ることができるのです。
モチベーションの源泉がわかっていれば、環境を変える際や新しいことを始めようと思った時に、「どういう選択をすべきか」や「どういう環境に身を置くべきか」が明確になります。過去の経験に基づいた「間違いの少ない選択」がしやすくなるでしょう。
結果、新しいチャレンジや選択が前向きにできるはずです。
●自分が大切にする「価値観」を可視化できる
モチベーショングラフを作成する過程では、自分自身の過去の行動を振り返ったり、その時の気持ちを深掘りしていきます。
心の動きと向き合いながら、それを可視化する作業を通じて、自分が大切にしている「価値観」を再確認することができるのです。
自分が大切にしている価値観がわかっていれば、新しいチャレンジをする際も自信を持って一歩踏み出せるはずです。
●説得力のある自己アピールができる
自分自身のモチベーションの源泉や価値観がわかっていれば、就活においてもいろいろな場面で役立てられます。
例えば自己PRや志望動機を伝える際に、モチベーショングラフで導き出した出来事の中から具体的なエピソードを交えて語ることができます。そしてそれは説得力のある自己アピールにつながります。
どういう状況だと力が出しやすいかがわかっていれば、会社選びや職種選びにも役立てられますし、当然、ミスマッチも起こりにくくなるでしょう。
モチベーショングラフの作成の仕方
作成にあたっては特に決まった方法はありません。以下にポイントをまとめますので、参考にしながら進めてみてください。
(1)これまでの経験を振り返り、印象に残っている出来事をピックアップ
まずは幼少期から現在までを振り返りながら、自己分析を進めます。これまでの人生の中で強く印象に残っていることや、感情が大きく動いた出来事をピックアップしてみましょう。
具体的には、職歴や人間関係、学校生活や部活、アルバイト、習い事、家族との関わり、自分一人で取り組んだことなど、何かに限定せずに自由にいろんな角度から過去の出来事を振り返ってみてください。
「この時は嬉しかった」「この経験はしんどかった」「こういうふうに言われたのが印象に残っている」「初めてこんなことをしたな」など、小さい頃からの出来事を紐解いていきましょう。グラフにまとめるところで取捨選択しますので、まずは思い出すことに重点を置き、その時の気持ちと共に書き出します。
(2)ピックアップした出来事のモチベーションを数値化する
ピックアップした出来事について、グラフ上の座標に置くための「数値化」作業を行います。モチベーションの高さの上限を100、下限をマイナス100とし、「その出来事が自分にとってどのくらいモチベーションが上がるものだったのか」を判断していきます。
数値化が難しい時は、「最も印象に残っている出来事」を1つ選んで、それを基準に判断していけばやりやすいかもしれません。「一番嬉しかったこれが100だから、それに比べたら70くらいかな」といったイメージです。
大事なのは細かい数値を決めることよりも、自分にとってどれくらいインパクトがあった出来事だったのかを自分自身で把握することです。あまり難しく考えすぎずに進めてみてください。
<参考例>
◎5歳 毎日一緒に遊んでいた友達が引っ越してしまい、寂しかった。その後もなかなか他の友達のグループに入れず、保育園に馴染めなかった (-30)
◎8歳 サッカー部の体験入部に参加。運動神経を褒められ、嬉しかった。それを機にサッカーを始める (50)
◎10歳 じゃんけんで負けて学級委員になる。考えていることをうまくみんなに伝えられず、もどかしかった (-70)
◎11歳 サッカー部のキャプテンを無理やりやらされて嫌だった (-50)
◎12歳 サッカーの市大会で優勝する。練習がきつく、キャプテンとしてまとめ役を期待されるのはしんどかったが、表彰状をもらった時は全てが報われた気がした (100)
◎13歳 今でも尊敬している山田先生との出会い。自分を尊重してくれて、話も聞いてくれて、背中を押してくれたことで、勉強も部活も頑張れた (80)
◎14歳 成績が伸びず、親からダメ出しをされ喧嘩。悔しくて頑張ってみたものの空回りしてしまい、結局は部活に逃げる日々 (-80)
◎15歳 親友と一緒にテスト勉強。事前に対策した数学の問題が出て、バッチリ解けたのが嬉しかった (40)
◎17歳 サッカーの市大会で初戦敗退。練習の成果を試合で出せないまま終わってしまい、不完全燃焼 (-90)
◎18歳 第一志望の大学は不合格になるも、大学に進学。目標を立てて努力することの難しさを知り、自分の足りない部分に直面する (-60)
◎18歳 大学進学を機に上京。全てを自分で決められる新生活が始まり、毎日がとても充実していた (40)
◎20歳 アルバイト先で接客の仕事を褒められ、表彰される。人に何かを伝えたり、喜んでもらう仕事に楽しみを見出す (70)
◎21歳 ゼミの発表がうまくいった。最初は苦労したが、友人に相談して協力してもらう。誰かと一緒に作業をする面白さを感じた (50)
(3)縦軸と横軸を書き、グラフを作成する
ここからは、ピックアップした出来事を実際にグラフに記入していく作業です。
まずは記入するためのグラフを作成します。
横軸が「時間」になりますので、「1年ごと」「3年ごと」「5年ごと」など、ピックアップした要素の数に合わせて区切りを設定します。縦軸は「モチベーションの高さ」となりますので、横軸から上方向に上限をプラス100、下方向にマイナス100まで設定しておきましょう。
(4)縦横の座標に合わせて、出来事をグラフに記入する
ピックアップした出来事を、作成したグラフ上に記入していきます。横軸の時間の流れに沿って座標を取り、出来事と理由をまとめます。
「短くまとめよう」「わかりやすく書こう」などと考えすぎず、「直感的に」「思うままに」「自分の言葉で」書いておく方が、後で分析するときに心の動きを判断しやすくなります。
(5)座標を順番につなげ、グラフを完成させる
記入した出来事の座標を時間の流れに沿って繋いでいきます。これにより、感情の起伏がグラフ上で表現されることになります。
作成したものをどう活用する?
モチベーショングラフは作成して終わりではありません。大事なのは、グラフによって可視化されたモチベーションの変化をもとに、自己分析を行うことです。分析を行う際のポイントをまとめます。
●その出来事が起こった時の感情や行動を振り返る
ピックアップした時にもいろいろと振り返ったはずですが、あらためてグラフに記入した出来事について「なぜそうだったのか」を深掘りしましょう。
その時のポイントとして、「5W1H」などのフレームワークも活用しながら掘り下げてみるといいでしょう。「なぜそう思ったのか?」「何がそうさせたのか」といった視点から、理由や要因についてさらに掘り下げることで、自分自身が大切にしている価値観や考え方、行動の傾向なども見えてくるはずです。
●数値が高い理由、低い理由を言語化する
「数値が高いもの」と「数値が低いもの」に分けて着目します。それぞれ、高い(低い)理由をできる限り言語化することで、どういった要因が自分自身のモチベーションを左右しているのかについて探っていきます。
それぞれの出来事とその背景にありそうなことについて、思いつくままにキーワードを挙げていくといいでしょう。
●共通点を探し出す
「高いもの」と「低いもの」それぞれにどのような共通点があるかを探っていきます。全てに共通する要因がなかったとしても、より多くに含まれている要因があればそれを見つけ出します。そうすることで、あなたの「モチベーションの源泉」が明確になります。
モチベーションが高いところで多く見られた共有要因は、あなたが力を発揮できる環境を示したり、強みや武器としてアピール材料にできるものです。
逆に、モチベーションが低いところは、あなたが力を発揮できない環境や弱みにつながる内容を示しているといえます。
これらは具体的なエピソードから導き出されたあなた自身の「特性」ということになりますので、就活においては自己PRや志望動機にうまく盛り込み、説得力のあるアピールをするために役立ててください。あるいは、新しいキャリアを選択しようと考える場合であれば、判断材料としてうまく活用するといいでしょう。
モチベーショングラフを作成・活用する際の注意点
●自分自身の「ありのままの姿」を表現する
自己分析のためのフレームワークであり、人に見せるために作成するものではありません。自分の気持ちや考えをありのままに表現することを意識して、自分自身の内面としっかりと向き合ってみてください。
●大きな出来事から思い出すと書きやすい
何から考え始めたらよいか迷うこともあると思います。その場合は「進学したとき」などの「大きな区切りの時期」にまつわる思い出から振り返ってみると、始めやすいかもしれません。
●「自分の気持ち」を優先で考える
例えば何かで優れた成果を出したり、それを高く評価された場合でも、自分自身ではそれに納得がいかなかったり悔しかったりした場合は、その気持ちを大切にしましょう。モチベーショングラフで大事なのは「あなた自身の気持ちや考え」であり、周囲の評価や価値観ではありません。
●手書き、エクセルやパワーポイントなど、作りやすい方法を選ぶ
作成するにあたっては、自分が一番やりやすい方法で始めてみましょう。手書きでも構いませんし、ExcelやPowerPointなどを活用すれば修正などもしやすくなります。また、無料で使える専用のテンプレートなどもありますので、調べてみるといいでしょう。
●グラフを書くことに時間をかけすぎない
グラフを作成することはあくまで手段です。もっとも大事なのは自分自身のこれまでを深掘りし、感情が動く源泉となるものを見つけ出して言語化すること。「綺麗に見やすく」「体裁よく」などと考えすぎず、「自分が理解できればいい」くらいの気持ちで作成してみてください。
まとめ
これまでの出来事や経験を振り返りながら、「モチベーション」の可視化ができるのが「モチベーショングラフ」の大きな特徴です。他のフレームワークとうまく組み合わせながら、自己分析に役立ててくださいね。









